1974年京都大学理学部卒業後、大阪大学医学部入学、1979年同大学卒業、1986年大阪大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士取得。健保連・大阪中央病院泌尿器科勤務、市立堺病院泌尿器科医長、健保連・大阪中央病院泌尿器科部長・医務局長を経て、2009年10月に泉北藤井病院/梅田ガーデンシティ女性クリニックにウロギネセンターを開設。2015年3月より第一東和会病院にウロギネコロジーセンターを開設。
CHAPTER01
河野製作所という会社を知ったのは、おそらく2010年頃の日本女性骨盤底医学会のときに、他企業の方に紹介してもらったことがきっかけだったと思います。
はじめに紹介していただいたASFLEXという縫合糸がTVM手術の際に非常に使いやすく、営業担当の方と共に同様の手術を行う医師への紹介もさせていただきました。
ある時、経腟メッシュ 手術のエキスパートが集う研究会でASFLEXを紹介していたとき、偶然にもメッシュの話題になり、河野製作所がメッシュも製作していると知りました。そのころアメリカではFDAより既存メッシュへの勧告が出されて販売中止となった時期でもあり、私は海外製品だけに頼る状況にリスクを感じていました。わずか30分程度の手術で女性を悩みから解放できるTVM手術には、メッシュが必要不可欠。安定供給が見込める安全な国産メッシュの必要性を感じた私は、骨盤臓器脱用メッシュを河野製作所にお願いすることにしたのです。
CHAPTER02
そもそも女性泌尿器科を手掛けたきっかけは、大病院でできない分野でブランディングをしてみようと考えたからです。いざ始めてみると想像を超えた多くの患者さんが相談にいらっしゃいました。自分にできる臓器脱の手術を探していたときに、TVM手術のことを知りました。海外の先生に来ていただいたり、フランスへ勉強に行ったりして手技を習得し、日本で初めてメッシュを使った手術を行いました。この手術にはメッシュが欠かせません。もっと言えば、骨盤臓器脱用のメッシュは、再発や合併症を起こさないために、硬くなく、なおかつ成形がしっかりできるものでなくてはなりません。
河野製作所のメッシュ「ORIHIME」は、まだまだ改良の余地はありますが PTFEという素材を使用することで既存のものよりも柔らかく、術後の痛みを防ぐことができます。私が紹介したこともあり、今や国産メッシュとして多くの患者さんに知られるようになり、「ORIHIME」での手術を希望される患者さんもいるほど信頼が寄せられるようになっています。現在までにおよそ累計7,000例のTVM手術を行ってきましたが、高齢化が進むことで将来的にも 臓器脱に悩む患者さんが減ることはないと思います。治療法の選択肢は広がってきましたが、TVM手術の有効性は認知されていますし、患者さんの術後の満足度が高いというデータもあります。今後は若い世代の医師をしっかりと教育してTVM手術の技術を継承していければと考えています。
CHAPTER03
微細加工に特化している河野製作所の工場は、きっとハイテクだろうとイメージしていました。しかし、つくば工場に見学に行った際に、ほとんどを手作業で行っているのを目の当たりにして、この時代に機械以上の正確さを誇る手作業の技術力に驚き、医療業界のみならず、日本を支えている技術の一端を見せてもらったと感動したことを覚えています。また、技術力もさることながら、大手企業やグローバル企業では難しい「顔を合わせられる」という点も、河野製作所の大きな強みだと感じています。河野製作所は「医工連携」に取り組まれていますが、「医工連携」の実現には現場の声を拾い上げられるかどうかが重要なポイントになります。その意味で、密なコミュニケーションがとれることはとても大きいと思います。以前、「このような針糸が欲しい」とお伝えしたら、竹山スペシャルと名付けられた縫合糸を作っていただけたことがありました。現場の声を受け、一緒に考えながら製品を開発する。ビジネスを優先させる大手企業では実現が難しいことも、河野製作所なら成し遂げることができると私は思います。
今後、TVM手術を継承していくためには、若手に正しい知識や手技を伝えていくことが大切と考え、現在は教育にも力を入れています。「ORIHIME」は多くの女性を救い続ける可能性がある製品ですが、より手術を継承しやすいよう、手技をサポートしてくれるような製品をともに考えていただきたいと思っています。河野製作所にお願いしたいのは、「実直でうそのない、他をあっと言わせるような洗練された製品」を今後も作り続けてほしいということです。信頼している医師や患者さんを裏切らないためにも、これまでと同じように誠意の込もったものづくりで優れた製品を生み出し続け、医療に貢献していただきたいと思います。